2003年10月16日
精巣(睾丸(こうがん))は、胎児期にはおなかの中(腹腔(ふっくう))にあり、次第に下に降りてきて、生まれる時には陰のうの中に収まります。精巣が降りる時、腹膜の一部も一緒に、陰のうに降りてきます。この薄い膜は、陰のう上部の鞘状(しょうじょう)突起と、下部の鞘膜(しょうまく)からなり、鞘膜は精巣を囲む“さや”のような構造になっています。 陰のう水腫は、通常は鞘状突起の部分が閉じるはずなのに、うまく閉じないで、さやの中に水がたまった状態です。精巣に水がたまるわけでは、ありません。さやの中にたまる水は、腹膜から分泌されたものと考えられています。 腹腔とさやのつなぎ目から、腸が降りるとそけいヘルニア(脱腸)に、水が降りると、陰のう水腫になります。しばしば、そけいヘルニアと陰のう水腫は、同時に起こります。 陰のう水腫は、乳児ではしばしば自然に軽快するので、手術をせず経過を観察します。ただ、お子さんのように、3歳10か月になっても水がたまっている場合は、水が自然に吸収される可能性は、ほとんどありません。また、さやに注射針を刺して水を抜く治療は、効果がありません。 治療は、全身麻酔による手術が必要です。手術は、そけい部(股(また)の付け根)を切開してさやを糸で縛り、水が降りる腹腔との交通を遮断します。手術時間は20―40分くらいです。 手術は、さやに水をたまらなくさせることと、脱腸が元に戻らなくなる「かんとんヘルニア」などの合併症を防ぐのが目的です。小児外科医に、よくご相談ください。
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